三島由紀夫の「金閣寺」、ずっと室町時代の時代小説だと思い込んで生きていた。
最近まで、金閣寺放火事件のことは知りませんでした。
随分前の記事(7年くらい前の記事)で、三島由紀夫の存在そのものを勘違いしていたことはお伝えしましたが…
そして、その頃から私の事実認識は自分が思う以上に歪んでいたということを認識して、とにもかくにも普通の日本人に戻るために試行錯誤してきましたが、
私が見てきた金閣寺が、戦後ある事件があって再建されたとは知らないままでした。
最近まで私は、あの金閣寺は銀閣寺と同じように室町時代からそこにあったものっだと思い込んでいました。
小学校の教科書や参考書にも、中学校の教科書や参考書にも、高校の教科書や参考書にも、金閣寺が放火によって消失されて再建された記述はなかったと記憶してます。
たまたま私が見落としていただけなのかもしれませんが、知りませんでした。
学校の授業でも、その話に触れてくれた記憶はありません。
だからかもしれませんが、金閣寺と銀閣寺の存在を知った小学生の頃から、なぜ金閣寺と銀閣寺ではこんなに見た目の違いがあるのだろうということが気になっていました。
今思えば、古と再建の違いがあってこその銀閣&金閣の風格の違いなのですが……、その違いの根本にあるはずの金閣寺放火事件の事は、テレビっ子なはずなのにもかかわらず、つい最近まで知らずに生きてきました。
知ったきっかけは、居島さんか…虎ノ門ニュースか…。
三島由紀夫の本は、現代人の教養の一つとして読まなきゃいけないと分かっていても、最初に手に取った「仮面の告白(処女作)」があまりに受け付けない内容であったがために、
余計に三島由紀夫を遠ざけることとなり、逆になぜこのホモ男が世の中に影響を与えることになったのか…不可思議に私は見つめるようになりました。
それでも、彼の名作の一つとされている「金閣寺」くらいは読まなきゃいけないだろうとは思っていたのですが……
そもそも時代小説が苦手なことも相まって、「金閣寺」は私にとって遠い存在であり続けました。
っていうか、「金閣寺」が時代小説だと思ってしまうことが、そもそもの間違いなんですけどね(笑)。
その誤解を解いてくれたのは、多分虎ノ門ニュースで他愛もない話をしていた時間だったと思います。
その時初めて、金閣寺が放火でなくなったこととその事件を題材に三島由紀夫が「金閣寺」を書いたことを知りました。
私は、それまで時代小説だと思い込んでいた「金閣寺」が、全く別の話だとしって衝撃を受けたのでした。
それは大きな衝撃だったのか?
三島由紀夫の「金閣寺」は、私から見れば不思議な作品でした。
ルポルタージュでもなく、ドキュメンタリーでもなく、小説。
しかも、実際にあった事件に対し、三島由紀夫がこれでもかというくらいに本人になりきって内面を描いていく作品。
私はそこに複数の違和感を覚えました。
だって、犯人の気持ちは犯人にしか分からないはずなのに、三島由紀夫が発した言葉が世論の多勢になるのは必須でしょ?
私はそこに違和感を覚えたんです。
当然三島由紀夫は、それなり以上の取材をした上で書いているはずだけど、その言葉の本質には三島がいる……そこに私は所謂「司馬史観」とはなんなのかというのを…垣間見た気がします。
ちなみに私は司馬遼太郎の本が好きになれなくて、ちゃんと読んだことはないんですけどね……現代の歴史観が司馬目線になって作られていることには、そこはかとない違和感を覚えている一人です。
私はそういう感じが好きじゃないんですよね。
歴史を小説として描く上で、そうならなきゃ書けない(なりきらなきゃ書けない)という気持ちは分からなくはないけれども、特に当時において…しかも近々に起きた事件に関して、まさに犯人になり切った形で描いていくことの重大性に、三島は気がつかなかったのか、周囲も気がつかなかったのか、しかも絶賛したのか…、そんな思いを常に纏いながらこの本を読み続けましたが………
読み終えて分かったことは、金閣寺事件も金閣寺放火事件を描いた三島由紀夫も、そして三島由紀夫の「金閣寺」を絶賛した世論も、全てがこの時代を現わす産物だったということ。
そうなのだろうと…思いました。
最近世相は、間違いを分からなくさせるということを書き綴っていますが、
私から見れば、これもその一つだったように思えます。
あの時代に生きた人だからこその思いであり、事実であり、真理である。
世の中は、三島由紀夫のあの表現が素晴らしいだとか言いたがりますが、そうではなく、
それがあの時代の善であり、良であり、事実とみなされることである。
そう私は思ってます。
そして、あの金閣寺の放火事件は、世の中を震撼させるほどの衝撃を放った事件であるということを分かる事の方が大事なじゃないかなと……
後世に生きる私は思うわけです。
時代って、不思議ですね。
「金閣寺」を読みながら、私はその感覚をはっきりと実感しました。
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