木曜日は「物語の時間で~すよ♪」ということで、私が書いた小説をお届けしています。
この作品は2017年3月頃に書いた作品です。
当時瞑想とかしたりするとこの作品に書いた映像が浮かんでしまいまして……そしてそれが日常生活でも消えない状況になってしまったので、浮かんでしまった映像をそのまま文章化した作品です。
どうぞお楽しみください。
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目次
11 告白
私の名はアウワ。 この国に産まれて15年の月日が経ったばかり。
一族は国の情報流通を司る係をしている。幼馴染のグウワやシュウワは何年も前から、一族の手伝いをしているけど、本当のことを言うと私は、情報流通になんて全く興味がなかった。
許される限り花や昆虫とお喋りをして、毎日を楽しんでいたかったのだけど、さすがに15歳にもなって何にも手伝わないわけにはいかなくて、ようやく今年から、一族のお手伝いをするようになったばかり。
「えぇ~噓でしょ?またまたそんなぁ」
初めて彗星が地球に近づきぶつかるという話を聞いた時、私は笑っていた。その話を真剣に受け取ることはできなかった。
そんな危機は、目の前に広がる現実と全く繋がらなかった。
たま~に観る悲劇映画くらい、全くしっくりこない話だった。
そもそもムーに深刻なんて言う言葉が、全くしっくりこない。悲しみや苦しみの感情を生まれてからこの方ほとんど感じたことないのだから。
ほとんどというか、ほとんどの人は全く感じたことがないと言ってもいいと思う。
私はきっと全く感じたことがないと思う。
この星、そしてこの国は、いつも愛に満ち溢れ、そして楽しい。
そんな私たちの国が「来週無くなる」なんて言われても、その時、私は実感をもってその言葉を受け止めることが全然できなかった。
だけど、私以外の一族はみんな血の気が凍るような顔をしていた。グウワやシュウワの深刻な表情も初めて見てしまった。私は事の重大さの実感まではできなかったけど、周囲の雰囲気で大変なことが起きているのだということを受け止めざるを得なかった。
さらに、スジャナティやオノポリオンたちが予測する未来は、幸せな毎日を生きて来た私たちにとって辛すぎるものだった。未来の話を聞けば聞く程、その後も生きる意味が分からなくなった。このまま幸せな気持ちのまま死んで、そしてもうこのまま二度と人間として生まれてこなくていい、そう思った。
私の素直な本音を言えば……それは……「死にたい」だった。
でも、一族としてそれは許されない運命だった。お花を専門とする家に産まれれば良かったと心の底から思った。花や農家、芸術家などは、一部を除き死への選択の自由が残されていた。
だけど、情報流通を司る家系の全てはその選択の自由がなかった。全員生き延びなくてはならなかった。それは、これからの地球のため。ムーが無くなると分かっているのに、今までの地球が無くなると分かっているのに、私たちが生き延びる意味がどれほどあるかなんて、全然分からなかった。
私たちが愛した国は数日後、海に沈む。
私も一緒に沈みたい。
心の中ではずっとそう思っていたけど、もちろんその願いは叶うはずもなかった。
ならばせめて、地球の避難所で、この星の中でその日を迎えたいと思っていたのに、それも叶わなかった。
私の家やシュウワの家は宇宙連絡班に任命されて、彗星がやってくる前日に出発する。宇宙から、地球を観察せねばならなくなった。私にとっては最悪の事態だった。
地球は彗星の衝突後、どうなるか誰も分からない。
それはムーの人だけが分からないのではない。アトランティス人、それから異星人たちにおいても同意見だった。
ムーにもアトランティスにも、この銀河有数の科学技術がある。友好星にもそれ同様、いやそれ以上の科学技術があったが、この先に起こることなど、誰も分からなかった。
つづく
つづきは来週木曜日に公開です。
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