㊍14 笑え! 私物語~ムーの記憶~

木曜日は「物語の時間で~すよ♪」ということで、私が書いた小説をお届けしています。

この作品は2017年3月頃に書いた作品です。

当時瞑想とかしたりするとこの作品に書いた映像が浮かんでしまいまして……そしてそれが日常生活でも消えない状況になってしまったので、浮かんでしまった映像をそのまま文章化した作品です。

どうぞお楽しみください。

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目次

 

14 笑え!

 

その広場は石畳になっていて、中央には祭り太鼓を中心とした楽器隊が陣を取り、ムー民謡を演奏している。周囲にいる観衆たちは、その音に合いの手を入れ、踊り楽しんでいる。さらに、円を描くように演奏と踊りを見て楽しむ人たちがいる。大人たちは酒を片手に楽しみ、子供たちは無邪気に走り回っている。

 

今日が最後だと誰もが知っているのに、今日が最後だと誰も思う事のできない光景に、私の心はジワっとよろめいた。

 

「心、動揺させたらダメってお母さんに言われたんじゃないの?」

私の左隣にワープですぅっと現れたグウワがそっと呟いた。

 

「そうなんだけど……。今まで感じたことのない、知らなかった感情がどんどん溢れて、どうしていいか分からないの。こんな感情知らないし、止め方も分からないの。グウワはどうなの?」

 

「親父は『見るな』って言う。特に今は見たら取り返しがつかなくなるから『見るな』って言っていた。そして、その気持ちを覆い隠すくらい大きな声で笑えば良いって。だから、ふと溢れそうになる初めての感情を感じる時、俺は普段の何百倍も大袈裟に笑ってる。この数日間、笑い過ぎて喉が痛いよ」

 

「私だって笑いたいけど……」

 

私がそう言った瞬間、私たちの前を強い風が通り過ぎ、広場に集まる多くの人の目がこちらに向けられた。

 

「アウワ!笑え!大きな声を出して笑え!」

 

「あーはっはっは、あはははは!」

 

私の声に合わせて、広場に集まる人も大きな声で笑った。どんなに悲しくても笑わなくてはならない。これがどれだけ辛いことなのか初めて分かった気がした。

 

そもそも悲しいなんて感情、つい数日まで知らなかったのだ。

 

心がきしむ感触だって知らなかった。

 

辛いという感情も、酷だという感情も、何もかも私には初体験だらけ。

 

涙が出るのは嬉しい時だけだと思っていたけど、初めての感情を味わうたびに私の頬に涙が伝った。そして、こんな感情が溢れると涙が伝うことに、私は驚いていた。

 

この国で過ごすグウワと最後の日。グウワはいつも以上に楽しそうだった。

 

でもそれは、悲しいということの裏返しなのだと分かるようになった。グウワが笑ったら、私はそれ以上に大きな声で笑い、私が笑うとグウワはそれ以上の声で笑った。

 

今朝目覚めた時、いつもの祭り以上の賑やかな声が街に響いていた理由が分かった気がした。謎が一つ解けると、頬に涙が伝う。そのたびにグウワは言う。

 

「笑うぞ!」

 

「あーはっはっは、あはははは!」

 

 

普段そんなに使わない喉の筋力は既に悲鳴を上げていたけど、それでも私たちは笑い続けた。頬に不意に涙が伝うたびに、私たちは笑わなければならなかった。この国が最後まで穏やかであり続けるために……。

 

つづく

 

 

つづきは来週木曜日に公開です。

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