㊍06 残り七日の戦い 私物語~ムーの記憶~

木曜日は「物語の時間で~すよ♪」ということで、私が書いた小説をお届けしています。

この作品は2017年3月頃に書いた作品です。

当時瞑想とかしたりするとこの作品に書いた映像が浮かんでしまいまして……そしてそれが日常生活でも消えない状況になってしまったので、浮かんでしまった映像をそのまま文章化した作品です。

どうぞお楽しみください。

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06 残り七日の戦い

 

 その翌日も、さらに翌日も、スジャナティやオノポリオンたちは「生き延びろ」と何度も懇願した。それでも、多くの国民はそれでもムーから動こうとしなかった。

 

ムーの人間の中に、人生を個人のために考えるものは誰一人としていない。地球を穏やかな形で持続させていくことだけが僕らの使命であり、運命であり、それこそが喜びであるからだ。

 

だけれども、あまりに酷な未来の話をされて、賛同できる国民はほとんどいなかった。逆にスジャナティの話を聞けば聞く程、国民の中で生き残りたくないという気持ちが強くなっていった。しかしながら、死の選択の自由を与えられていない国民も大勢いた。たとえば、石や植物や建築の職人、それからフィールドレイクを作る職人などは、避難所を整備する任命を受けたため、死の選択の自由は与えられなかった。整備をしたら任務が終わりなのではない。避難所を守り通すことが任務だからだ。

 

僕の家やアウワやシュウワの家は情報流通を司る役目が与えられている。ムーには、それぞれの情報に長けた専門家がいて、その一族たちが常にその専門性たる情報を占有している。彼らは常にそれに夢中であるがゆえに、その情報を広域に渡すことをつい忘れてしまう。僕らの一族はそんな専門家一族らと逐一連絡をとりながら、新たな発見や新しい情報を国内や国外に伝達するのが役目だった。だから死の選択の自由はなかった。

 

だけれども、情報流通を司る役目の者たちは事の重大さを一瞬で気が付くことができた。だからこそ、生き残る道を選んだのだ。死の選択の自由がないからではない。自らの意志で生き残ることを選んだ。とはいえ、生き残る道に恐怖がないかと言えば噓になる。

 

だから僕は何度も言い聞かせた。自分のことを考えちゃいけない。地球のためなんだと。地球のために生き残らなければならないんだと。

 

しかも、僕はまだ17歳だ。やりたいことは山ほどある。突如起きた彗星の衝突で、この先予定していた未来の何もかもを失ってでも生きていかなくちゃいけないなんて……。あれこれ考え始めると、とりとめない思いでどんどん自分が苦しくなっていく。

 

だから、僕はさっきの言葉を言い聞かせるように徹底した。自分のことを考えちゃいけない。地球のためなんだと。地球のために生き残らなければならないんだと。それ以外のことを考えないようにするために。

 

つづく

 

つづきは来週木曜日に公開です。

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