木曜日は「物語の時間で~すよ♪」ということで、私が書いた小説をお届けしています。

この作品は2017年3月頃に書いた作品です。

当時瞑想とかしたりするとこの作品に書いた映像が浮かんでしまいまして……そしてそれが日常生活でも消えない状況になってしまったので、浮かんでしまった映像をそのまま文章化した作品です。

どうぞお楽しみください。

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15 さよならムー

別れの時刻は迫っていた。

 

飛行場でグウワの唇を離した瞬間、心がキリキリするような感触、切ない気持ちがまた込み上げた。

この数日で、心の一部の感触しか知らなかったことに驚いたけど、それは知らなくても良いことのような気がしている。

こんな苦しい感情なんて、誰のために、何のために存在するのだろう。理由は分からないけど、きっと存在しなくてはならないのだろう。

 

それは、なんのため。どんな未来を描くため? 答えは全く出てこない。

 

そんな気持ちを抱えたまま、私は宇宙船に乗り込んだ。

 

宇宙船は50人乗りの小型な物で、私とトルマティの家族と親戚が乗組員の大半を占めていた。また、宇宙船はムー製ではなく、ムーの友好星であるプレアデス星団の物で、操縦はプレアデス人たちが担当していた。

 

ドーム型になっている宇宙船は外側の全てガラスではない透明の素材でできていて、外の様子がパノラマで見えるようになっていた。そして、その透明な素材を目の前に離陸用の着座子があって、それはドーム型の船内をぐるりと一周するように置かれている。

 

宇宙船の中には、街に溢れていた笑い声は一つもなく、既にみんな離陸用の椅子に着座した状態だった。

私とシュウワは急いで空いていた残り二つの席に並んで座った。窓の先には、グウワの姿があった。笑顔で手を振るグウワの姿に、私はまたもや込み上げる複雑な感情に苦しんだ。

 

シュウワがそっと私の左手を掴み、私の瞳の奥を見た。

「大丈夫だから」

それは安心させる合図だった。その合図にほんの少しだけ私の気持ちは落ち着きを取り戻し、それと同時に宇宙船は飛び立った。

 

手を振ってくれていたグウワの姿はすぐに闇と同化していった。街はどんどん小さくなっていく。広場で踊り続ける人の姿が豆粒よりも小さくなる。この明かりを見ることはもうないのだろうか。

 

一度はシュウワの合図でリラックスしたものの、私の身体は徐々に強張っていった。

 

そして体中が緊張に包まれていると感じた瞬間、宇宙船内に柔らかな花の香、桜のような淡く控えめな甘い香りが一気に漂った。それと同時に、シンキングボウルのように脳を揺るがす金属の音が鳴り響いた。

 

私はそのまま眠りに落ちていった。

 

つづく

 

つづきは来週木曜日に公開です。

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takehisayuriko

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