木曜日は「物語の時間で~すよ♪」ということで、私が書いた小説をお届けしています。
この作品は2017年3月頃に書いた作品です。
当時瞑想とかしたりするとこの作品に書いた映像が浮かんでしまいまして……そしてそれが日常生活でも消えない状況になってしまったので、浮かんでしまった映像をそのまま文章化した作品です。
どうぞお楽しみください。
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目次
今日はムー最後の日。
私は目が覚めるとすぐに外に飛び出し、いつものように太陽の光を浴びた。ムーの空は朝が一番美しい。ほのかな桃の色の虹の上に、黄金の太陽が光り輝く。私は、体いっぱい朝日を吸い込んだ。
街のあちらこちらで祭りの音が響いている。民の笑い声と太鼓の音とそれから掛け声に手拍子。それはとても、賑やかで心地良い音だ。今日でこの国が終わろうとしているのに、それを悲しんでいる者などいないかのような声が辺り一面響き渡っている。私は目を瞑り、その音が聞こえる方に意識を集中した。
私はとてもムーの人らしい最後の迎え方だと思った。ムーはいつも悲しまない、笑っている。別れを悲しまない、みんな大声で笑うのだ。悲しむことによって嵐を起こさぬように、植物を傷つけぬように、動物を驚かせぬように、笑うのだ。そして、魂が天に召される瞬間には、必ずみんな言うんだ。
「君の人生は素晴らしかったよ。また会おう」と。
そんな別れの日の歌が街には響き渡っていた。
ムー人にとって、死とは一瞬の別れに過ぎない。違う経験をするために、また人は生まれ変わる。それは科学的事実として、誰もが知っていること。だから、悲しまない。だけど、ここに住む誰もが、もう二度とこの国に住むことなどできない。今日がお別れなのだ。きっと私と同じくらい、いやそれ以上に悲しんでいるはずなのに……その気配をどこにも感じることはできなかった。
「私たちが無事に宇宙に旅立てるように、みんな気配りしているのよ」
じっと外を眺めている私に、母が後ろから呟いた。
「国中が狼狽えれば、すぐさま嵐が起こるわ。それでは、避難地に行く人、宇宙に旅立つ人の行く先を妨害することになるでしょ。みんな最後の最後まで、私たちのために笑うのよ」
母のその言葉で、私は心がきしむという感触を初めて味わった。
「アウワ、今日一日何があっても笑うのよ」
母は私の瞳の奥の方をじっと見つめて言った。
私の心の中の事、その何もかもを母は全部分かっていた。しばらく瞳をみつめて、両肩をポンと叩いて母は言う。
「私たちの宇宙船が出発するのは、午後六時半。六時までには飛行場に来て。それまでは、グウワと楽しんできていいから」
「いいの?」
母はこくりと頷く。
「必ず二人はまた会えるということ。それを誓ってから、飛行場に来て」
「ありがとう!」
私は、急いで身支度を整えながら、グウワにテレパシーを送った。グウワも私たち一家が地球を旅立つ瞬間まで自由にしろと、父親に言われていたらしい。
私たちは、一番賑わっている祭り広場の端で待ち合わせした。
つづく
つづきは来週木曜日に公開です。
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