木曜日は「物語の時間で~すよ♪」ということで、私が書いた小説をお届けしています。
この作品は2017年3月頃に書いた作品です。
当時瞑想とかしたりするとこの作品に書いた映像が浮かんでしまいまして……そしてそれが日常生活でも消えない状況になってしまったので、浮かんでしまった映像をそのまま文章化した作品です。
どうぞお楽しみください。
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目次
ムーは科学技術が発達しているので、多くの建築物はあっと言う間に作り上げることができる。それでも、彗星が地球に向かうスピードには到底追いつけず、世の中は切羽詰まっていた。
彗星は地球に刻一刻と近づき、ついにアウワやシュウワが宇宙に旅立ち、僕が西の避難所に出発する日がやってきた。
六日前、金星ほどの大きさだったはずの彗星はあっという間に十倍ほど大きくなっていた。確実に近づいていることが分かる。
東の避難所は、石材で街を作り終えていた。しかし、そこは植物もほとんど育たないような特に高地の場所だったために土地が狭く、国民全員が収容できるものではなかった。
西の避難所となる森林地帯は、植物を育てる観念の強い場所だったので、急ぎで街を作ることは憚れた。
植物の同意なしに人間の好き勝手に地球をいじくることは許されないことだったのだ。フィールドレイク職人は西の高地のできるだけ広い範囲に結界を作ることに決めた。
西の避難所となる森林地帯は国民全員を収容することは可能だったのだが、国民の半分以上は、生き残ること拒否し、最後の時を謳歌していた。
生き残ることは、苦しみを選ぶことなのだから、今回の危機において選択の自由ができる人たちのほとんどは死を選ぶことにためらいがなかった。
避難所に行く者を、まるで戦場に送り出すように嘆き悲しみ、死を選択する自分たちのことを許してくれと懇願していた。
ムーは悲しい事が苦手だ。悲しいと言う感情が正直言うとよく分からない。別れの儀式をしている一瞬だけは、嘆き悲しむ感情がワーッと溢れることもあるのだが、その後はケロっとしてみんな笑い合う。
今日もムーは笑っている。いつも以上に笑っている。
ムー最後の日、僕は広場にアウワと出かけた。
その広場の中央には、祭り太鼓を中心とした楽器隊が陣を取り、ムー民謡を演奏していた。周囲にいる観衆たちは、その音に合いの手を入れ、踊り楽しんでいる。さらに、円を描くように演奏と踊りを見て楽しむ人たちがいる。大人たちは酒を片手に楽しみ、子供たちは無邪気に走り回っていた。
まるで明日この国に彗星が激突することを、まだ誰も知らないかのようだった。
つづく
つづきは来週木曜日に公開です。
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